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リスク回避の第一歩は就業規則の見直し(または作成)から

就業規則は労働時間や賃金などの労働条件、職場での服務規程などを定めたルールブックです。常時10人以上(アルバイト・パートも含めて)の労働者を使用する事業所(会社単位ではありません)はそれを作成し、労働基準監督署への届出義務があります。

就業規則は様々なトラブルを防止するだけでなく、従業員にとってもより働きやすい職場環境にするためにも有効かつ必要不可欠なものと言うことができます。そのためにも届出義務のない10人未満の事業所においても就業規則の作成を強くお勧めします。

書店やインターネットでは様々な就業規則の雛形があります。とても安くまたは無料のものもあり、内容としては労働基準法に忠実な内容になっており、決して悪くない内容です。

しかしながらそれが御社にぴったりかどうかは別問題です。御社の規模や業務内容、実情などに対応した完全オーダーメイドの就業規則作成が様々なトラブル防止のために必要不可欠です。

就業規則はその事業所において拘束力があり、経営者といえども改定の手続を経ることなく、勝手に変更したり、都合のいい解釈をすることができません。裁判に発展した場合でも、就業規則に基づいて判決を下すことになります。

さらに就業規則は労働基準監督署による調査にとどまらず、税務署による税務調査(特に給与や退職金規程など)や銀行の融資の判断材料のひとつになるなど、その重要性がより高いものとなっています。

就業規則をめぐる様々なトラブルをご紹介しますので、そうならないためにも自社オリジナルの就業規則の重要性を認識していただけると幸いです。

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就業規則をめぐるトラブル事例

その1 退職金規程の適用範囲ミスで退職金を支払う羽目に

社員のAさんは、3年前の3月に定年の60歳を迎えました。3年間継続雇用して、今年の3月に退職ということになったのですが、そのAさんから、130万円の退職金を支払ってほしいと申し出がありました。会社としては、継続雇用の人に対する退職金は考えてなかったのですが・・・その後、裁判になり会社は敗訴。130万円の退職金を支払う羽目に・・・

実際の裁判の事例です。何がいけなかったのでしょう。近年、働く人の形態が多様化してきました。期間契約の人や、パート・アルバイトの人、短時間で働く正社員等いろいろな形態があります。
この会社の就業規則の欠点は、退職金規程の適用される社員を限定してなかったため、継続雇用の人にも退職金規程が適用になると判断されたわけです。このように、正社員だけに適用する制度を、適用範囲が不明確になっていたために、継続雇用の社員や嘱託社員等の人にも適用されるという裁判例は数多くあります。


その2 社員か行方不明になり解雇できない

社員のBさんが、突然出社しなくなりました。会社として、本人に何度も連絡したのですが、連絡が取れません。3週間が過ぎて、懲戒解雇の処分を下すことにしたのですが、本人に連絡が取れないので、弁護士に相談しました。その後、内容証明を2回送付しましたが、もちろん不在で受け取りはできません。人事担当者が自宅にも行きました・・・その後、弁護士と相談して、裁判所から公示送達という手続きで解雇通知を出すことになりました・・・

就業規則の不備な例の一つです。行方不明社員を想定した規定がある就業規則はほとんどありません。この事例のように、人事担当者が時間を使い、弁護士に相談料を支払うという事態になると会社としては損失です。給与とボーナスを合わせて400万円の社員の1時間単価は、4,000円になります。これは、厚生労働省の統計で会社は給与の1.8倍の費用をかけているというデータで計算した結果です。日本の労働者の年間の労働時間が1800時間ですから、(400万×1.8)÷1800時間=4,000円となります。
行方不明社員に書面を送付、「内容証明郵便」で2度目の送付、自宅訪問、裁判所に公示送達の申し込み・・・という一連のトラブル処理で30時間以上もかかってしまったのです。これで12万円以上の損害です。さらに弁護士費用も考えると20万円以上になりました。

これらは、ほんの一例です。様々な事例がありますので、しっかりとした就業規則の作成が欠かせません。
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